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最高裁判所第二小法廷 昭和29年(あ)2062号 決定

主文

本件各上告を棄却する。

当審における訴訟費用は被告人鄭英浦の負担とする。

理由

被告人鄭英浦の弁護人酒井雄介の上告趣意について。

所論は量刑不当の主張を出でないものであって、刑訴四〇五条の上告理由に当らない。

被告人福島弘の弁護人長崎祐三の上告趣意一点について。

論旨は、原判決が第一審判決を維持し、同判示第一の銅インゴット及び第二の諸物件につき、被告人福島弘に対しても、その占有を認め旧関税法八三条一項、三項によりその原価を追徴又は物件の没収を是認したのは、東京高等裁判所の判例(昭和二九年(う)第一一八号)に反するというのであるが、原判決の維持した第一審判決挙示の証拠を綜合すれば、所論各物件は、本件各密輸の共犯者の一人として、被告人福島弘の占有にも属していたことが肯認できるから、所論引用の判例は本件に適切でない。所論はその実質は事実誤認の主張に帰し、刑訴四〇五条の上告理由に当らない。

同二点について。

所論は事実誤認の主張であって適法な上告理由に当らない。

なお、被告人福島弘が第一審判決判示第一の密輸入罪及び第二の密輸出未遂罪の共犯であること並びに第二の犯罪が予備の段階に止まらず、未遂の域に達していることは、第一審判決挙示の証拠によってこれを肯認することができるから此点に関する原審の判断は正当である。

また記録を調べても同四一一条を適用すべきものとは認められない。

よって同四一四条、三八六条一項三号、一八一条により裁判官全員一致の意見で主文のとおり決定する。

(裁判長裁判官 小谷勝重 裁判官 藤田八郎 裁判官 池田克 裁判官 河村大助 裁判官 奥野健一)

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